back2sleep事業奮闘記(1)始まりで終わり?

back2sleepのご紹介

今、日本ではナステントという会社で代表取締役をしています。

この会社ではナステント®という製品を開発、販売しています。いびきを軽減することを目的とした一般医療機器です。チューブ状のシリコンを鼻に入れて寝るとあらびっくり(?)、いびきが低減する、というものです。

とても手軽にできるいびき対策で私も使っているのですが、問題は価格が高いこと。日本の薬事規制で一般医療機器としては1回1回使い捨てにせざるを得ないため、毎日使うと1ヶ月で税込12,744円かかります(2024年10月現在)。

これを何とかしたいと思って開発したのがback2sleep®。ヨーロッパの薬事規制では一般医療機器でも連続で15回までの利用が認められているため、2本のチューブをリユースすることで30日分使えるようにしています。

back2sleep®の商品サイトはこちら。(個人輸入であれば日本からも買えます)

価格は1年間のサブスクリプションで、クーポン等を使うと実質税込249€(約40,836円)。1ヶ月3,000円ちょっとで使えます。

いびき対策グッズとしてはちょうどボリュームゾーンに入る価格帯にすることができました。それでいて医療機器であり、臨床試験で効果はきちんと実証されています。

絶対の自信作だが、なかなか売れない

念入りに市場調査を行い、開発からヨーロッパ市場に合わせて作り込みました。

実際に出来上がった試作品を使ってみると、日本のお客様には申し訳ないのですが、特許申請中の新しい仕組みにより鼻へのフィット感がナステントよりも格段に良く、これはいい!というものができました。これで価格は日本の4分の1です。

さまざまな工夫で、製品バリエーションも少なくすることができました(日本は24種類、ヨーロッパは4種類)。これで在庫管理等も格段に楽になるはずです。

ドイツにかなり良いシリコンチューブの製造委託先を確保し、協力者のいたフランスに会社を作り、リモートCEOになり、「さて行くぞ」となったのですが、これがなかなかイバラの道。

最初は生産においてもいろいろ問題がありました。特に鼻に止めるクリッパー(針金状のもの)の歩留まりが悪く、再委託先のフランスの会社をドイツの会社に切り換え、そこでクリッパーの製造をしてもらうことにしました。

針金問題が解決した後も、シリコンの射出成型時にクリッパーとの位置関係が変わってしまったり、シリコンの内部に気泡のようなバリが出たり。生産工程の段取りにも問題が出て、なかなか製品ラインが空かなかったり。結局生産の安定化に1年を要しました。

でも、そこをクリアすればあとは売るだけ。じつはナステントはヨーロッパでも販売していた実績があり、当時集客も頑張っていて月間10万人が来ていたのでした。それを当てにそろばんをはじくと売れるはずでした。

が、サイトを公開してみると、ん、月間1,000人しか来てない?なんと、先方のパートナーからの情報で期待していたユーザ数の1%しかありません。。。

そこからSEO対策をやり直しここまで来ているのですが、それでも全然うまくいかない。

日本のSEOは素人である私がやっているのですが、それでもヨーロッパの10倍以上の検索ワードからの流入があります。

海外サイトのSEOは難しい

そこで、私も海外サイト(英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語)のコンテンツを読み、SEO対策をどう改善すればいいのか、乗り出しているのですが。。。

やっぱり海外、難しいのです。どんなコンテンツがひきが強そうなのか、全然見当がつかない。。。

例えば日本ではいびきをかく人はいびきアプリを探している人が多く、いびきアプリでSEO対策をするとけっこう人が来てくれます。が、ヨーロッパにはまったくそんな風習がない(いびきアプリの開発会社はイギリスの会社なのですが。。)。

代わりに、睡眠クロノタイプとか、錯乱性覚醒とか、日本ではほとんど見たこともないキーワードでお客様がいらっしゃっている。

やっぱり住んでいないとわからんなぁ、というのが本音です。

アウトソース先にある程度任せていたもののやはりとても薄いコンテンツが量産されてしまうので、日本での成功事例を共有するなどしているのですが、やはり文化の壁は大きい、と実感します。

この点、安心してビジネスを任せられる人(特にマーケティング)が先方にいないのであれば、安易に海外進出はすべきではないなぁ、と反省しています。

徹底的なリーンオペレーションをしているが。。。

最初から、全額自己資金で始めたビジネスなのでとにかく損益分岐点を下げようと思って事業の構築をしてきました。

ポイントは人件費を筆頭に固定費をできるだけ削ること。実際私の会社では、雇用している人はゼロで、全部業務委託です。

その結果、SEO対策を外部委託しつつも、月間の運営費はだいぶ抑えています。それでも、SEOやカスタマー対応、薬事対応は最低限お願いせざるを得ません。そこにペイドアド(広告費を払ってメディアに広告を掲載する)が加わると、そこそこの金額になります。

もう一つは、財布の口をきちんと握っておくこと。銀行口座は日本から見られるようにしていて、請求書等の情報もリアルタイムに見られるようにしています。こうして、リモートであっても無駄なお金が出ないように気を付けることはできています。(この方法は日本のナステント社においても同じく実践しています。零細企業においては財布は何よりも重要なものです)

でも、結局のところ、商売は売れないと何も始まらないわけですから、出発点からなかなか進まないうちに数か月が過ぎてしまった。そんな感じです。

撤退も考え始める

ずるずるやっていても芽が出そうもなければ撤退する。それは鉄則ですが、いざ自己資金をつぎ込んでみると、製品は競争力があるし(少なくとも日本では類似品で製品が高いにもかかわらずお客様がついていて、利益率が低いにもかかわらず事業が回っている)、絶対芽が出るはずだ、と思ってしまう自分がいます。

そして事業はサンクコスト効果(埋没費用ともいう。それまでに費やした労力やお金、時間などを惜しんで、それが今後の意思決定に影響を与えること)に縛られず、これからの収益性だけで考えるべき、という鉄則は重々承知でも、なかなか判断がつかない。

経営の鉄則、頭に入れるのは簡単ですが、実際立場が変わると(たとえば、私が立て直しのための新任雇われ経営者としてある会社に赴任したら、簡単にこのビジネスをやめさせることはできる)、なかなか判断もできないものだなと思います。

また、そもそもの話として、ビジネスには我慢が必要な時が必ずありますが、それがどれくらい必要なのか、我慢していればその先があるのか、その見極めは言うほど簡単ではないなぁと実感しています。

今、うすうす気づき始めているのは、キーサクセスファクター(KSF=成功のカギ)は、お客様の「製品や会社に対する信頼」なんじゃないかということ。医療機器の分野では、とても大切なこと。

そう考えると、コストを考えて、オンラインに絞って展開しようと思っていたところに無理があったのかもしれません。

でも、この「信頼」を構築するには非常に長い年月とコストを必要とします。自己資金でやるビジネスとしては不向きだったのかもしれません。

ということで、重点KPIを立てて、その結果いかんで年末には撤退か継続かの判断することにしました。

それなりに長い間会社の経営をしていても、なかなか難しいものです。

コメントを残す